梅こらむ

2015/11/27

餡づくりと「水」

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お菓子屋にとって餡づくりは、製菓技術を学ぶ上での入り口であり同時に終着点でもあります。

私の餡づくりについての勉強は25才の頃から始まりました。
大学を卒業後菓子の修行先としてお世話になった京都の烏丸室町にある京菓子老舗「末富」様や同じ京都の柏庵の中井様また緑庵の岡田様にもお菓子づくり、餡づくりの多くの事を学ばせて頂きました。以来、35年に亘り同業の方々、小豆の生産者の方々、道具や機械を扱っている業者の方々、あるいは日本料理の先生方などほんとうに多くの方々からもご指導を頂きました。
ありがたい限りです。

小豆の選別、小豆の洗浄、水漬け、豆煮、蒸らし、小豆の漉し、蜜漬け、糖上げ
小豆の「ご」の晒し、搾り、練り方、取り方、櫂の入れ方、練り釜の形状、鉄釜と銅釜、熱源、煮釜の大きさ、形、漉し機のふるい、などなど最高の餡づくりに欠かせないノウハウは、無数にあります。
いわゆる「職人技」と言われる作り手の技術であり尊いものです。

しかし、ここ10年くらいの間に「職人技」に科学の目が加わって来ました。
たとえば、熱の波長(遠赤外線)、釜の中心の温度の測定、圧力と温度、圧力と沸点、粘度の測定、そして水についてです。
水に含まれる鉄分、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムなどがもたらす味への影響も少しずつ解かるようになって来ました。すなわち硬度です。更に水のクラスター(粒子)の問題も解明されてきました。
近年までおいしい餡をつくろうと勉強を重ね、京都老舗の餡づくりの職人の方に何度となく来て頂いたり、道具の研究や工程の見直しを繰り返し繰り返し行なって来ました。しかし、京都本場の餡に匹敵する最高の餡は完成しませんでした。

「何故だろう?」と悩みつつ10年単位で時が流れていきました。

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ある時、私の先輩が富士山の中腹で井戸を掘り、ミネラル飲料の新事業を始めたので、その水を頂戴しました。
熊谷の地下水の硬度は85°~120°位。京都の水は硬度が35°前後、富士山の水の硬度は24°です。
世界的に見ればどれも軟水でこの水の存在が日本の食文化を支えているのですが、京都の水や富士山の水は、その中でも超軟水です。やわらかく、とても美味しい水です。

「この水で餡を造ったらどんな味になるのだろう。」とタンクローリーを用意して頂き、何トンかの富士の水で餡を造ってみました。

「これだ!!」30年以上に亘り研究を重ね、京都の職人の方々に何度も指導して頂いたのにできなかった餡の風味が見事に完成できたのです。

ほんとうに美味しい風味豊かなあんが出来たのです。

「水か!水の違いだ!」適度なミネラル分、熟成し安定したクラスターの細かい鮮度の高い水。良い水が良い味をつくるのかも知れません。
山に雨が降り、地下にしみ込みそれぞれの地形、地質をたどり流れ動き少しずつミネラル分を含み熟成し安定してわき出る水。
京都の水、富士山の水、熊谷の水、あるいは外国の水それぞれはそれぞれの地形、地質そして流れ動き熟成し湧き出るのです。

それは、それぞれの土地の文化だと思います。その土地の水を使って作物を育み、食べ物を調理する。そして人がそこで生きている。その土地の文化を生み出していると言えます。
今、私共は、熊谷の地下水を使ってこれからもお菓子を作っていこうと思っています。
なぜなら、それが私共の味であり私共のお菓子の文化だからです。

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京都の水や富士山の水には負けてしまうかも知れませんが、私共がお菓子づくり餡づくりで培った技術と想いを込めて梅林堂の菓子、埼玉の菓子、その土地の文化ですから胸を張ってお客様に召し上がって頂こうと思っています。

その想いが、「上品」や「塩豆大福」「つぶ大福」「武州路」「どら焼」「おはぎ」「おまんじゅう」などの餡の味に生きづいています。是非、引き続きご愛顧下さいますようお願い致します。


梅林堂 代表取締役社長 栗原良太