餡づくりと「水」

ひとこと

お菓子屋にとって餡づくりは、製菓技術を学ぶ上での入り口であり同時に終着点でもあります。
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ある時、私の先輩が富士山の中腹で井戸を掘り、ミネラル飲料の新事業を始めたので、その水を頂戴しました。
熊谷の地下水の硬度は85°~120°位。京都の水は硬度が35°前後、富士山の水の硬度は24°です。
世界的に見ればどれも軟水でこの水の存在が日本の食文化を支えているのですが、京都の水や富士山の水は、その中でも超軟水です。やわらかく、とても美味しい水です。

「この水で餡を造ったらどんな味になるのだろう。」とタンクローリーを用意して頂き、何トンかの富士の水で餡を造ってみました。

「これだ!!」30年以上に亘り研究を重ね、京都の職人の方々に何度も指導して頂いたのにできなかった餡の風味が見事に完成できたのです。

ほんとうに美味しい風味豊かなあんが出来たのです。

「水か!水の違いだ!」適度なミネラル分、熟成し安定したクラスターの細かい鮮度の高い水。良い水が良い味をつくるのかも知れません。
山に雨が降り、地下にしみ込みそれぞれの地形、地質をたどり流れ動き少しずつミネラル分を含み熟成し安定してわき出る水。
京都の水、富士山の水、熊谷の水、あるいは外国の水それぞれはそれぞれの地形、地質そして流れ動き熟成し湧き出るのです。

それは、それぞれの土地の文化だと思います。その土地の水を使って作物を育み、食べ物を調理する。そして人がそこで生きている。その土地の文化を生み出していると言えます。
今、私共は、熊谷の地下水を使ってこれからもお菓子を作っていこうと思っています。
なぜなら、それが私共の味であり私共のお菓子の文化だからです。

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京都の水や富士山の水には負けてしまうかも知れませんが、私共がお菓子づくり餡づくりで培った技術と想いを込めて梅林堂の菓子、埼玉の菓子、その土地の文化ですから胸を張ってお客様に召し上がって頂こうと思っています。

その想いが、「上品」や「塩豆大福」「つぶ大福」「武州路」「どら焼」「おはぎ」「おまんじゅう」などの餡の味に生きづいています。是非、引き続きご愛顧下さいますようお願い致します。


梅林堂 代表取締役社長 栗原良太